余市

導入

余市ウィスキーは、スモーキーで芳醇な風味が特徴的な日本のウィスキーブランドです。創業は1934年で、独自の製法と味わいを追求し、日本独自のウィスキーブランドとして確立しました。多くのウィスキーファンに愛されており、さまざまな年代物が楽しめます。

この記事では、余市ウィスキーの魅力と歴史について紹介します。

余市蒸溜所

"日本のウイスキーの父”と呼ばれるニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝は、北海道・余市を第一の蒸溜所建設の地として選びました。この地は日本のスコットランドとも称される気候と豊かな自然に恵まれています。ニッカウヰスキーは、創業時と変わらない伝統の技を受け継ぎ、力強く重厚なモルト原酒を作り続けています。

2022年2月、キルン塔(第一乾燥塔)を含む複数の施設が、日本のウイスキー産業の発展においてかけがえのない歴史的資産として認められ、重要文化財に指定されました。

余市蒸留所の歴史

北の原野に見つけた理想郷

竹鶴政孝は、本場スコットランドで学んだウイスキーづくりを一切の妥協を許さず再現することにこだわりました。そのためには、スコットランドに似た冷涼で湿潤な気候、豊かな水源と澄んだ空気がそろった場所が必要でした。

日本各地を巡り探し求めた末に竹鶴が辿り着いたのが、ここ北海道・余市です。当時の余市は民家もほとんどなく、ただ雑草と土塊に覆われた湿原が続く寂しい土地でしたが、竹鶴はこの海風が吹く原野こそウイスキーづくりに理想的な場所であると見抜きました。

ニッカウヰスキー第一号誕生

出資者を募った竹鶴は1934年、ニッカウヰスキーの前身である大日本果汁株式会社を余市に設立しました。妻・リタを工場敷地内の木造洋風家屋に迎え入れて蒸溜所建設に取り組みました。2年後にはポットスチルの炉に石炭がくべられ、ウイスキーづくりの第一歩が刻まれました。

しかし、ウイスキーは蒸溜してすぐ販売できるものではありません。原酒が熟成して出荷できるようになるまで、竹鶴は地元特産のりんごを搾ってジュースとして販売し、運転資金に充てました。「大日本果汁」、後に「ニッカ」となる社名は、このりんご果汁にちなんだものです。ジュースだけでなくゼリーやワイン、ブランデーなど、りんごは数々の商品となって黎明期の経営を支えました。

さまざまな苦難を乗り越え、遂にニッカウヰスキー第一号が世に出たのは、1940年のことでした。スコットランド留学から22年目の秋のことでした。

原酒の特徴

こだわり抜き選んだ石炭直火蒸溜

竹鶴政孝は余市蒸溜所に託した役割は、重厚で力強いコクのあるモルト原酒をつくることです。そのために採用されたのは、自ら学んだスコットランドのロングモーン蒸溜所と同じ石炭直火蒸溜法です。

蒸溜にはポットスチルが使用され、下向きのラインアームを持つストレートヘッド型です。アルコール以外の成分が残るため、複雑で豊かな味わいがモルト原酒に与えられます。職人が絶妙なタイミングで石炭をくべ入れることで、ポットスチルの底部は1000℃を超える高温になり、「焦げ」が生まれ、独特の香ばしさが引き出されます。

日本海を臨む厳しくも豊かな大自然

余市は北に日本海を臨み、豊かな自然に囲まれた地です。厳しい冬の間に余市岳などの山々に積もった雪は、春になると雪解け水となり、余市川に注がれます。この清流が原酒の仕込み水となります。大麦も豊富に育ち、石狩平野ではピート(草炭)や石炭を採掘することもできました。

寒冷な気候はウイスキーの熟成に適しており、わずかに潮の香りを含む湿潤で澄んだ空気が樽を乾燥から守り、芳醇な香りを封じ込めます。

竹鶴が目指した力強い原酒を育むには、厳しくも豊かな大自然に包まれた北の海辺は理想的な条件を備えています。

力強く重厚な余市モルト

余市モルトは石炭直火蒸溜法で作られ、竹鶴政孝が目指した通り、力強く重厚な味わいを持っています。新樽に詰めて熟成させると、木の個性が強く出る一方で、ウッディな香りやバニラの香りも感じられ、本来の重厚さを損ないません。グレーンウイスキーや複数のモルトを組み合わせても、余市モルトが基幹となり、深みのある豊かな味わいのウイスキーを生み出すことができます。

また、「余市モルトには潮の香りがする」とも言われています。石狩湾から吹く海風のフレーバーを樽が吸収し、熟成の過程で原酒に溶け込んでいるのかもしれません。余市蒸溜所では、ヘビーピートタイプのモルト原酒も伝統的に作られてきました。

2001年には、「シングルカスク余市10年」が日本のウイスキーとして初めてWhisky Magazineの「Best of the Best」総合第1位を獲得しました。その後も多くの世界的な賞に輝いています。余市モルトの個性は、世界中の多くのウイスキーファンに愛され続けています。

商品紹介

シングルモルト余市

創業者・竹鶴政孝がウイスキーづくりの理想の地として選んだ北海道の余市は、重厚で力強く、複雑で深みのある味わいのシングルモルトウイスキーです。やわらかな樽熟成香と麦芽の甘さ、豊かな果実香の調和が特徴です。力強いピートの味わいと香ばしさも楽しめます。また、穏やかに持続するオークの甘さとスモーキーな余韻も魅力です。